近年、福祉の現場で最も大きな課題と言われているのが、人手不足です。
せっかく福祉系大学出身者や社会福祉士を採用しても、短期間で離職してしまったという経験をお持ちの方も多いかと思います。
筆者自身も、若手職員が半年もたたずに退職してしまったという事例をいくつも見てきました。
離職してしまう原因が分かれば、職場としても対策も立てやすいですよね。
そこで、この記事では、社会福祉士として働く筆者が、福祉の職場で離職してしまう原因を紹介していきます。
筆者のプロフィールはこちら https://fukushilabo.com/zikosyokai/
- 介護・福祉の職場で人材が定着しない理由とは?
- 職場の人間関係が悪い
- 働き方が選びにくい
- 職場の待遇が悪い
- 求人がたくさん出ているので転職しやすい
- ステップアップしにくい
- 思っていたよりも仕事が大変
- 精神的に辛くなる
- 対策~他の求人を見て、採用につながる求人を学ぼう
1,介護・福祉の職場で人材が定着しない理由とは?
ずっと福祉の職場にいると、自身の職場のことが客観的に見えにくくなってしまい、人材が定着しない理由を探ることが難しくなっていませんか?
しかし、福祉の職場には他の業界との違いがあります。その違いを比較することによって、福祉業界で人材が定着しない理由も見えてきます。
「せっかく育成した職員に、長く働いてもらうにはどうしたら良いの?」という悩みを抱えている福祉事業所の管理者の方は少なくありません。
ここからは、福祉以外の業界でも働いた経験がある筆者だからこその視点で考える、福祉の現場で離職率が高い原因を5つ紹介していきたいと思います。
離職率が低く、職員が生き生きと働ける環境づくりに役立てて頂ければ幸いです。
2,職場の人間関係が悪い
福祉の仕事はやりがいを感じられる尊い仕事だと思いますし、実際、筆者の周りでも「仕事は楽しいんだけど…」とお話される方が多くいます。しかしながら、職場の人間関係が悪いと、働いていくうえで精神的にキツイですよね。
福祉職は看護師や保育士と同様、女性が多いのが特徴的です。また地方によっては若手の人口が少ないため、50~60代の女性が多いという職場もあります。
同じ年代や性別が固まっているコミュニティの中で、違うタイプの人が働いていくのは割り切って働ける人でないと、なかなか大変なことです。
そこで、会社としては職場の人間関係を良くしていくための環境づくりも大切になっていきます。新しく入ってきた人は緊張したり、委縮したりしてしまって新たな環境になじめないこともあるので、意見を言いやすいような雰囲気づくりをすることが大切です。
3,働き方が選びにくい
近年はライフスタイルや家庭の状況に合わせて、社員が自ら多様な働き方を選べる企業が増えてきました。
例えば短時間勤務制度やリモートワーク、フレックス勤務などです。
制度を作るだけではなく、自らの働き方を自分で好きなように選択できるかどうかが大切なポイントです。
しかし、福祉の仕事の場合、個人情報の管理が厳しいためデータを外部に持ち出せず、リモートワークを認めていない職場も多いのが現状のようです。
また、施設でもグループホームでも、利用者さんの生活リズムに合わせて働くため、勤務時間を柔軟に変更することは難しい職種と言えます。
ライフスタイルの変化に対応
女性は結婚や子育て、介護などによってライフスタイルが変化します。その中で、柔軟に働ける職場の方が長く働けると感じるのは当然のことだと思われます。そこで、ライフスタイルの変化がきっかけで離職してしまうことがあります。
それぞれの私生活での事情は異なっているとしても「ライフスタイルの変化に柔軟に対応する」という対策を打つことができれば、解決できたケースは思い浮かびませんか?
職場として、利用者さんのために事業を維持しつつも、職員の働きやすさに目を向けてみてはいかがでしょうか。
4,職場の待遇が悪い
福祉の現場で働く人の中には「自分自身の生活がかなり苦しい」とこぼす人が少なくありません。まじめに働いていても毎年の昇給はわずかですし、ボーナスが支給されないところもあります。
また、福祉職でも所長などに昇進すれば、給与アップが見込めるかもしれませんが、基本的に年功序列です。それは、福祉の現場では民間企業の営業職などと異なり、自身の業績や成果をアピールしにくいことが一因となっています。
そのため、「昇進するまでにあと何年安月給で我慢しなければならないのか」と考えると、憂鬱になってしまうのは致し方のないことと思います。
時代と共に考え方も変化している
昔は福祉の職員が利用者さんの権利のために汗を流すことが普通であり、待遇が伴っていなかったとしても一生懸命働くタイプの人が多かったようです。
しかし、福祉制度やサービスが充実した現代では、そのような考え方は若手職員には通用しません。
職員1人ひとりも人間ですから、「自分のことをよく見てくれている」「会社のコマとしてではなく、私のことを考えてくれている」と感じると、会社に貢献したい気持ちが強くなります。福祉の現場においても、少しでも待遇を改善する努力と、職員を大切にする姿勢が求められています。
福祉業界の収入は国からの支援費に頼っており、構造的に儲かりにくい仕組みになっていますが、職員の副業解禁など、法人内の制度を独自に変更することは可能ではないでしょうか。
5,求人がたくさん出ているので転職しやすい
福祉の職場で職員がすぐに辞めてしまう理由の一つに、業界全体の人手不足が挙げられます。福祉の現場で働いた経験のある人が、他の業界に流れるかというと、必ずしもそうとは言えません。
結局、求人数の多い福祉の業界で転職を繰り返す人の方が多くなっています。
もちろん、人手不足の問題は業界全体で取り組んでいく必要があります。
ただ、一つの法人で業界全体の課題を変えることは難しくても、他の福祉の職場に人材が流れてしまわないよう、転職を食い止めるための努力はできるかと思います。
まずは職員の不満を把握する
職員が働く上で抱えている不満を無記名のアンケートで洗い出したり、定期的に上司と面談する機会を設けたりするなど、予算をかけなくても、できることはたくさんあります。
まずは職員の声を聞くことが大切です。そして、職員が「職場が自分の意見を聞こうとしてくれている」と感じると、改善に向けて希望が抱けるので、離職したい気持ちにいったんブレーキが掛かるはずです。
「職員から相談があれば聞く」というスタンスの職場も多いですが、それでは職員は自らの声を発信しにくく、ストレスを溜めたまま退職してしまう事例が後を絶ちません。
職員の声を聞き、職場環境を改善していくことによって、離職を食い止めていきましょう。
6,ステップアップしにくい
福祉の職場の特徴として、スキルを身に付ける機会が少なく、自分の仕事に誇りや自信を持ちにくいということがあります。
研修の機会をたくさん設けているというところは少なく、研修の機会があっても、慢性的な人手不足から気軽に参加できないというのが現状ではないでしょうか。
また、研修を受けたからと言って、すぐに新たなスキルが身につくとも限りません。
「自分自身ができるようになったこと」や「成長できたこと」を感じ取れるような工夫が必要です。例えば他の業界では社内でスキルのコンテストと表彰を行ったり、資格取得を応援したりしています。
福祉の職場にいながら、職員が自分自身の給料の中から社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取るための授業料を支払うのは大変なことです。職員が資格を取得すれば、職場にも加算などで還元される部分は大きいでしょう。
福祉の現場においても、職員の成長を後押しするような人財育成のシステムが導入されてほしいと思います。
7,思っていたよりも仕事が大変
福祉の支援員の求人票を見ていると、未経験OK、年齢・学歴不問など、応募条件が緩いことが多いです。
当然、難易度の高い仕事の求人は、資格必須、実務経験必須、大卒以上など、応募する時点でハードルが設けられている傾向にあります。そのため、求人票だけ見ると、「待遇もそんなに良くないし、福祉の仕事って誰にでもできるのでは?」と思って応募する人もいるようです。
実際、現場の仕事に入ってみて、初めてその大変さに気が付くことが多く、結果的にすぐに辞めてしまうようです。覚えることが多くなってきたり、注意されることが増えるタイミングでの辞職が目立つように感じます。
採用する前に、本人の中のイメージと、現実のすり合わせが必要ですね。
8,精神的に辛くなる
「福祉の仕事で働いている人たちは優しい人が多そう」というイメージで就職してしまうケースも、早々に仕事が辛くなって退職につながってしまうことがあります。
きっと丁寧に仕事を教えてもらえると期待して就職したものの、現場に入ってみると、いきなり見よう見まねで仕事をさせられたという経験のある人は少なくありません。
仕事のやり方も十分教えられず、自分なりにやってはみたけれど、注意されてばかり…となると、精神的に辛くなってしまうのも当然と言えます。
新人職員への指導は必要ですが、注意するまでの過程にも配慮が必要になります。
9,対策~他の求人を見て、採用につながる求人を学ぼう
近年、人手不足を背景に、働きやすい職場をアピールしている福祉事業所が少しずつ増えてきました。特に福祉の職場は女性が多いため、「短時間から働ける」「自宅で作業OK」というのは、家庭と両立しやすく、長く働けるポイントとなります。
職員の離職を防ぐために、他の福祉事業所はどのような求人を出しているのか、転職サイトを見て参考にするのもお勧めです。
ぜひ職員が長く働ける環境を作ることで、福祉業界の職場が元気になっていくことを願っています。
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