これから就労支援事業所を立ち上げたいと思っている人の中には、「どうしたら利用者さんを集められるのだろう?」と考える人もいると思います。できれば立ち上げてからすぐに定員でいっぱいにしたいですよね。この記事では、社会福祉士として数多くの就労支援事業所を見てきた筆者が、「どんな手法で利用者さんを集めるの?」「利用者さんから見て通いたくなる事業所はどんなところ?」という疑問に答えていきます。
- 就労支援事業所で利用者さんを集める方法15選
- 相談支援事業所と仲良くなる
- 医療機関に紹介してもらう
- デイケアや医療相談室にチラシを持っていく
- 高等養護学校の進路担当の先生と仲良くなる
- 市役所の職員に挨拶に行く
- パンフレットを作成する
- ホームページで広報する
- マスメディアに取材してもらう
- 魅力的な事業所であることをPRする
- 工賃を高く設定する
- 工賃に昇給方式を導入する
- 随時見学会を実施する
- グループホームなど多角的に運営する
- フランチャイズ方式で運営する
- 利用者さんが定着するよう工夫する
- もし自分が利用者さんの立場なら利用したいと思えるかどうか
就労支援事業所で利用者さんを集める方法15選
就労支援事業所に利用者さんを集めるためには、まず利用者さんと呼ばれる方たちがどこに集まってくるかを意識することが大切です。就労支援事業所には誰でも通える訳ではなく、(1)障害者手帳を持っている、(2)難病指定を受けている病気の患者である、(3)精神科の自立支援医療の利用者、(4)医師の診断書によって一般就労が難しく、福祉的就労の必要性があると診断書が出ている、などのいずれかに該当する必要があります。
利用者さんを集めるにしても、多額の広告費はかけられないことが多いと思います。福祉は社会貢献度が高い事業ではありますが、こうした方たちはどこに行けば会えるのかを考え、どこにアプローチしたら良いかということがポイントになります。効果的な方法を使って利用者さんを集めていきましょう。それでは早速、具体的な方法15選を紹介していきます。
(1) 相談支援事業所と仲良くなる
利用者さんたちが福祉サービスを使いたいと思った時には、相談支援事業所に行く必要があります。相談支援事業所では、利用者さんに福祉サービスや事業所を紹介してくれ、見学・体験・利用するためのマッチングをしてくれるからです。相談支援事業所の人と顔なじみになっておき、事業所について知っておいてもらうことで、「この事業所とこの利用者さんは合うんじゃないか」という時に、利用者さんを紹介してくれます。
定員を満たしてしまうと受け入れが難しくなるので、あと定員まで何名くらい受け付けられるのかなどについても随時お知らせしておくと良いでしょう。
(2) 医療機関に紹介してもらう
就労支援事業所を利用できる方の中には、知的障害や身体障害以外にも、精神障害や発達障害の方も含まれます。
そういった方々は精神科病院やクリニックに通っていることが多いので、通院患者さんの中で事業所に合いそうな人を主治医に紹介してもらうと良いでしょう。
そして通院日などに合わせて、病院でご本人と面談し、見学をお勧めしてみることから始まります。1人の患者さんが利用につながり、その後も事業所に通い続けているという実績ができると、2人目、3人目と紹介しやすくなります。
(3) デイケアや医療相談室にチラシを持っていく
精神科病院やクリニックには、ソーシャルワーカー(社会福祉士や精神保健福祉士)が配置され、デイケアを開いていたり、医療相談室を設置したりしています。医療機関と一口に言っても、主治医に直接紹介してもらうだけではなく、デイケアや医療相談室のスタッフから紹介してもらうことも検討してみましょう。
チラシは定期的に持って行かないと無くなっていることもあり、デイケアのスタッフが率先して補充するということもあまり無いので、事業所側からアプローチを定期的に続けることが大切です。
(4) 高等養護学校の進路担当の先生と仲良くなる
障害者のライフコースを考えた時に、就労支援事業所を利用するのはどんなタイミングなのか、考えたことはありますか?
生まれつきの知的障害や発達障害の場合、高等養護学校を卒業後、18歳から成人向けの福祉サービスを利用するにあたって、事業所につながる場合も多いのです。
高校2年生になった頃から本格的に進路指導が始まりますので、進路担当の先生に挨拶しておき、積極的に実習生として生徒を受け入れることが望ましいでしょう。
(5) 市役所の職員に挨拶に行く
利用者さんたちが福祉サービスを利用したいと希望したとき、直接相談支援事業所に行くよりも、まずは市役所で相談する人も多くいます。それは、相談支援事業所の役割が一般的に知られておらず、地域に複数の相談支援事業所がある場合、どこの相談支援事業所に言ってよいか分からないということが多いからです。
また、障害者手帳を取得する時にも市役所の福祉課に行くので、市役所にもパンフレットや代表者の名刺などを持っていくことをお勧めします。
(6) パンフレットを作成する
ここまで、あちこちにパンフレットを持参するようお勧めしてきましたが、パンフレットは自分たちで手作りしている事業所も多くあります。外注するよりも、自分たちで作った方が足りなくなった時にすぐに印刷することができるというメリットもあります。
利用者さんたちの中には、スマホやパソコンを持っていないという方も多いので、紙媒体でも案内できるよう準備しておくことが大切です。
(7) ホームページで広報する
パンフレット以外に、自分たちで情報発信するとしたら、やはりホームページが有効です。写真を載せて事業所の雰囲気を紹介したり、製品をネット販売することも可能です。また、ブログ機能も使って、イベントを紹介すると、事業所の魅力が伝わりやすいでしょう。
パンフレットにはすべての情報を載せるのが難しくても、ホームページであれば色々な情報を載せることが可能です。
(8) マスメディアに取材してもらう
パンフレットやホームページでの広報について解説してきましたが、やはり自分たちで広報しても、なかな広まっていかないなど、限界を感じることがあるかもしれません。そういう時は、新聞やテレビ局などのマスメディアに取材してもらうことを検討してみましょう。筆者の知り合いの事業所も就労支援B型でドーナツ店をオープンした際に取材してもらったことで来店者が増え、かなり反響があったようです。
取材してもらうにはコツが必要なほか、運やタイミングもあるので、少しハードルが上がりますが、メディアに働きかけてみることが大切です。年末や3月は何かとイベントが多く、取材で忙しい時期なので、取材ネタが少なくなる夏の時期(業界用語で夏枯れと呼ばれます)を狙ってみることもお勧めです。
まずは、事業所で行っていることの中で、どんなことだったら取材してもらえそうか検討して、プレスリリースを送ってみましょう。
社会福祉法人がプレスリリースを書く時のポイント5選 https://fukushilabo.com/press-happyo/
(9) 魅力的な事業所であることをPRする
広報手法についてお伝えしてきましたが、そもそも広報するにはどんなことをPRしたら良いか、迷うことがあるかもしれません。
特に事業所の中にいると、魅力に気が付きにくいものですよね。自分たちの事業所は、ほかの事業所と比較して、どんな点が優れているのか、改めて考えてみることも大切です。
そんなに難しく考えず、「明るいスタッフが就労を応援します」「おいしいお弁当が低価格で食べられます」といった、簡単なことでも大丈夫ですよ。
就労継続支援事業所の商品を差別化するには?ポイント5選を解説 https://fukushilabo.com/syurob-sabetuka-2/
(10) 工賃を高く設定する
利用者さんたちが就労支援事業所を選ぶポイントとして、やはり「工賃がどれだけもらえるのか」という点が大きいと思います。筆者は社会福祉士として、色々な利用者さんに事業所を紹介してきましたが、どの利用者さんも必ず質問しています。利用者さんは就労支援事業所を利用する前に、必ずと言ってよいほど2~3か所を見学・体験することが多いです。
その中で多少仕事が体力的にきつくても、工賃のために頑張るという方もいます。週3日通った場合、週5日通った場合など、シミュレーションをパンフレットやホームページに載せておくと、分かりやすいでしょう。
(11)工賃に昇給方式を導入する
就労支援事業所の中には、昇給方式を導入しているところもあり、利用者さんたちからはなかなかの好評です。
特に初めて働くという方の中には、「最初は工賃が低くても仕方ない」と考える方も多く、努力次第で昇給していくことにやりがいを見出せるからでしょう。
昇給するルールとしては、利用期間に応じて工賃を上げていくところと、ご本人ができる仕事が増えた段階で上げるという2パターンがあります。
利用期間に応じて工賃を上げると、利用者さんがすぐに止めてしまうのを防ぐという効果と、能力に応じていないので、利用者さんたちの間で公平感が生まれます。
(12) 随時見学会を実施する
利用者さんたちはいきなり就労支援事業所と利用契約を結ぶのではなく、どんなに急いでいても、見学することが多いです。それは、就労支援事業所を利用するまでに、利用者さんたちが市役所で申請してから承認されるまでに数週間かかるので、その期間を活用することが多いからです。またサービス等利用計画において、利用開始日は毎月1日とすることが多いことから、本格的な利用まで時間があるというケースがあります。
そこで、事業所としては随時見学を受け付けることが大切です。利用者さんたちだけではなく、相談支援事業所や市役所などの職員を対象にした見学会を開くのもお勧めです。
見学会を企画するのは大変な場合は、「いつでも見学に来てください」と一言、パンフレットに入れるだけでも良いと思います。
(13)グループホームなど多角的に運営する
就労支援事業所だけではなく、同じ法人でグループホームなど、ほかの福祉サービスも多角的に運営していると、利用者さんが集まりやすくなります。
A法人が運営するグループホームに入居しながら、B法人の就労支援事業所に通うという利用者さんもいますが、同じ法人の方が何かと安心できますし、家族もそのように希望される方が多くいます。
ただし、必ず同じ法人の事業所を利用しなければならないというルールを設けると利用者さんの自由を奪ってしまいかねません。色々な選択肢の中に就労支援事業所に通うこともできると、提示することが大切です。
(14)フランチャイズ方式で運営する
自分たちで何から何まで事業所設立のために準備するのは難しそう…という方向けには、フランチャイズで運営する方法もあります。フランチャイズというと、コンビニエンスストアや飲食店、クリーニング店などを思い浮かべるかもしれませんが、最近は就労支援事業所のフランチャイズ方式もあります。既にあるブランドとして全国展開している事業所のノウハウを教えてもらえるので、失敗する確率が減るでしょう。
フランチャイズでは本社にマージンを支払うので、経費は掛かってしまいますが、メリットも多くあり、多店舗展開することで収益を上げている事業所もあります。
(15)利用者さんが定着するよう工夫する
せっかく利用者さんを定員で満たすことができたとしても、辞めてしまう人が多いと、運営は不安定になってしまいます。筆者が見てきた中にも、なかなか利用者さんが定着しないというところもあります。利用者さんから辞めたい理由を色々と聞くと、事情によっては、やはり別の方を紹介するのは止めておこうという考えになってしまいます。
利用者さんに長く利用してもらうためには、魅力ある事業所運営が大切となり、優秀なスタッフを育てていくことも欠かせません。事業所の設立はあくまでスタートラインであり、安定した運営を続けていくことが大切ですね。
もし自分が利用者さんの立場なら利用したいと思えるかどうか
利用者さんをたくさん集めて安定した運営をしたいと考えている事業所は多くありますが、「自分たちが利用する立場だったら」という視点を持っている事業所は少ないという印象があります。もしそのような視点があれば、事業所はどんどん良い方向に変わっていくはずです。本当はそういった視点が、利用者さんが集まってくる秘訣なのかもしれません。
最近では未経験のまま就労支援事業所を立ち上げるところもあるようですが、やはり設立後に苦労しているという話もよく聞きます。まずは短期間でも良いので、事業所で働いてみて、ノウハウを学ばれることをお勧めします。
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