介護施設や福祉事業所で勤務している人の中には、休憩がまともに取れず、不満に感じる人もいると思います。筆者も直接支援の現場で働いている時は、お昼休憩は利用者さんと一緒に休職を食べて終了だったので、その辛さがよく分かります。
この記事では、福祉事業所で職員が休憩を取れない現状と、「介護・福祉職ではなぜ休憩を取れないの?」という疑問に答えていきます。
- 福祉事業所では休憩が取れなくても当たり前?
- 他の業界では休憩はどう取っている?
- 労働基準法ではどうなっている?
- 休憩が取れない理由(1)人手不足が慢性化
- 休憩が取れない理由(2)昔の文化が根強く残っている
- 休憩を取れない理由(3)現場の職員が主張しない
- 休憩を取れない理由(4)労働組合がない
- 筆者の経験では…
- 食事の介助や見守りも立派な仕事
福祉事業所では休憩が取れなくても当たり前?
介護施設や福祉事業所では、入居者や利用者さんを見守りながら食事を取ることが、昼休憩とみなされてしまう職場がとても多いようです。
しかも介護職や福祉の現場で長年仕事をしている方にとっては、このことがごく当たり前のようになっているようなのです。
しかし、職員がきちんと休憩を取れない状態が普通になっていること自体が、異常だということに気が付くことが、まずは大切です。
他の業界では休憩はどう取っている?
まずは、介護・福祉の職員たち自身が、休憩をまともに取れない職場の異常性に気が付くことが大切だと述べました。
なぜなら、仕事をしながら休憩するなんてことは、ほかの業界ではありえ無いからです。筆者が別の業界から福祉の現場の仕事に転職して、1番驚いたことが、「休憩が取れない問題」でした。
他の業界では、作業(仕事)を中断して、仕事場から離れて休憩に入るのが普通です。
上司や同僚と昼食を食べることはあっても、営業の出先や出張先だったり、ランチミーティングなどの「ごくたまに発生する場面」であって、普段は仲の良い同僚や1人で食べることもできるはずです。
休憩がきちんと取れない職場はブラック企業とみなされて、社員がどんどん辞めていってしまうでしょう。
介護職において、「利用者さんを見守る」ということは、立派な仕事です。仕事をしている以上、職員が食事を取ったとしても、「休憩」とは呼べません。職場が何も対策を打っていないのだとしたら、施設の管理責任問題であり、怠慢でもあります。
労働基準法ではどうなっている?
働く人の権利として確保されている休憩時間ですが、法律でしっかりと定められています。
職場において「休憩時間を取る」という行為は、労働基準法で定められた「労働者の権利」であり、「使用者の義務」でもあります。義務ということは、職員に休憩を与えないと、罰せられてしまうということになります。
ちなみに休憩時間は、1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を与えられることになっています。
施設側は「利用者さんと一緒に楽しく食事できれば、休憩と言えるんじゃない?」と考えているかもしれませんが、それは甘いです。「休憩」とは、職員や社員が自由に時間を使える状態のことであり、仕事をやりながら取るものではありません。
休憩を取れない理由(1)人手不足の慢性化
福祉の現場で働く職員だって、心の底ではきちんと休憩を取りたいと思っている人が多いのです。
しかし、人手不足という現状から、休憩の取得を諦めてしまう場合があります。
ぎりぎりの人数で現場を回しているため、誰か1人が休憩で現場を離れると、残りの職員に大きな負担がかかってしまうということが目に見えています。そのため、みんな遠慮してしまって、休憩を取らずに頑張り過ぎてしまうのです。
その現場についていけない職員がいたとしても、「体力が無い」「根性が足りない」など、個人的な理由とみなされてしまう場合さえあります。しかし休憩をまともに取れない日が続けば、疲弊してしまうのはごく当たり前です。
現場の職員が遠慮せずに気持ちよく休めるようにするには、職員を増員して、チームリーダーが部下に、「休憩行ってきて」と順番に声をかけるような仕組みづくりが必要です。
ただ、求人を出しても応募が集まらないため、職員を増やすことができません。さらに、待遇が良くないので、職員が辞めていき、欠員を補充することで精いっぱいな状況になっています。
休憩を取れない理由(2)昔の文化が根強く残っている
利用者さんと一緒に食事を取ることについて、気が休まらないと主張することがタブー視されていることも、福祉業界の特徴と言えます。
現在は法律に基づいて施設が運営され、職員も一労働者として雇用されているので、労働環境について議論されるようになってきました。
しかし、福祉の制度や法律が追い付かず、篤志家が無認可の作業所を運営していた時代には、労働基準法に則った働き方という考え方自体が浸透していなかったのです。利用者さんと一緒に汗水たらして働き、寝食を共にしていた時代が美化・神聖化されています。その時代の努力があってこそ、今の福祉制度の充実があると言えます。
ですから、昔のやり方自体が悪いとは言いませんが、神聖化されていることで、古き良き時代の文化が根強く残り、労働環境の悪化につながってしまっていると言えます。
昔から長く勤めている職員にとってはそれが当たり前で、その人たちが施設のトップに君臨しているため、若い職員が労働環境の改善を訴えたとしても、なかなか変えるのは難しい現状にあります。
施設のトップが、「休憩を取らなくても良い」という昔ながらの意識を変革していくことが必要なのです。
休憩を取れない理由(3)現場の職員が主張しない
労働環境が悪いことに対して、強く主張する職員が団結すれば、管理者側も対応に乗り出さざるを得ないかもしれません。
しかし、介護・福祉の職員の特性として、元々気持ちが優しく、自己犠牲を払ってしまう人が多いという特徴があります。自分たちが我慢して、なんとか現場が回るのであればそれで良いという雰囲気のまま、現状を変えることができていません。
ずっと福祉業界で働き、他の業界を知らない場合は、「まぁこんなもんだよね」という感じで、変えようという意識が薄いようです。
休憩を取れない理由(4)労働組合が無い
休憩が取れないなどの職場環境が悪いのは、施設の管理者だけの問題ではなく、環境を改善しようと動かない労働者側の課題でもあります。
そもそも職場に労働組合が無い法人も多いため、職員が団結して主張しにくいということが背景にあると言えます。
病院や保育所には労組が組織されているところもありますが、介護・福祉の小さな法人には労組はほとんどないですね。主張しなければずっと環境は変わらないので、今後も同じ施設で働き続けるのであれば、権利意識を持って堂々と主張した方が良いです。
管理者側と労働者側の二項対立ではなく、働きやすい職場づくりが、職員にとっても利用者さんにとってもプラスになっていくという思考になることができれば良いですね。
筆者の経験では…
筆者が所属していた職場でも利用者さんを介助しながら、その合間に自分も食事を取り、そのまま午後の活動に移っていく流れでした。仕事に慣れるまでは自分のトイレさえも行けないくらい、職員が不足していました。先輩職員から「膀胱炎になっちゃうよ」と言われて、トイレだけはきちんと行かせてもらうようになりました。
もし休憩が取れないことを面接の時点できちんと知らされていたら、その職場に入っていなかったかもしれません。
いくら志が高くても職員も人間ですから、自由に食事を取ったり、1人でスマホを見たり、仕事から離れてホッとできる時間が必要です。山奥にある病院や施設では物理的に難しい場合もあるかもしれませんが、できれば施設や事業所から出て、用事を済ませられたらより良いですよね。
しかし、筆者が新人ながらそのことを上司に主張すると「現実問題、無理だから仕方ない」「利用者さんとは同じ人間として付き合っていくものだから、一緒に食事して疲れるというのは失礼ではないか」と一蹴されてしまいました。
その職場では心身に疲労がたまって体調を崩すことが多くなり、仕事を休まざるを得ない日も出てきていました。
今は資格を取って相談支援に転職して、本当に良かったと思います。
食事の介助や見守りも立派な仕事
介護施設での昼休憩は、利用者さんの食事を見守りながら、職員も昼食を食べるスタイルが多いようです。
食事の見守り・介助は、利用者さんがのどを詰まらせないか、どれくらいの量食べたか把握しなければならないので、決して「ながら作業」でできるものではありません。
「利用者さんと一緒にいて疲れる」ということではなく、緊張感をもって責任のある仕事をするために、その場にいるので疲労するということが、当時の上司には伝わりませんでした。
職員に休憩をきちんと取らせないのは、「食事介助という業務を軽んじているのではないか?」とさえ、考えてしまいます。
有望な職員を集めるためにも、このような労働環境を変えていかなければならないと思います。ただ、職員1人だけの力では、職場全体の文化や働き方を変えていくというのは、なかなか難しいのが現状です。法人のトップが働き方の改善に乗り出していかないといけない問題ですよね。職場の環境を変えるのが難しい場合、自分自身の健康を守るためにも、転職することがおすすめです。
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