福祉の仕事をこれから目指す方や、すでに福祉の現場で働いている人の中には、相談支援専門員になりたいと考える人もいると思います。
「相談支援って困っている人の話を聞いてパソコンで書類を作っていて、なんとなくかっこいい」。
直接支援や介護の現場と比べて、相談支援にはこんなイメージがあるかもしれません。
しかし、具体的には何をしているのか今一つ分かりにくい部分もあるかと思います。そこでこの記事では、実際に社会福祉士として3年以上相談支援事業所で働く筆者が、相談支援専門員の仕事内容を紹介していきます。
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- 1,相談支援専門員って何をやるの?ケアマネとの違い、仕事内容を解説
- 2,サービス等利用計画の作成(指定特定相談)
- 2-1,計画は成人と児童に分かれる
- 2-2,計画更新とモニタリング
- 3,基本相談支援
- 4,地域移行、地域定着支援(地域相談支援)
- 4-1,会議の開催
- 4-2,定期訪問
- 5,制度の申請代行
- 6,ケアマネとの違い
1,相談支援専門員って何をやるの?ケアマネとの違い、仕事内容を解説
相談支援専門員の仕事は、大まかに指定特定相談・障害児相談支援、基本相談、地域相談支援に分かれます(それぞれの事業については後程詳しく説明します)。
いずれも行政から相談支援事業所に委託され、事業所は委託費を受けることによって運営しています。
各事業所には相談支援専門員が1名~6名程度在籍し、高齢者や精神など、それぞれの得意分野に応じて仕事を分担しています。一般企業と比べると、かなり少人数で運営されているのが特徴と言えるかもしれません。5名以上相談支援専門員がいると「大所帯」というイメージです。
それではここから、相談支援専門員が行っている仕事内容と、ケアマネージャーとの違いを説明していきます。
2,サービス等利用計画の作成(指定特定相談)
障がいのある利用者が福祉サービスを利用したい時は、まず住民票のある自治体の窓口に申請します。その申請を受け付け後、行政から相談支援事業所にサービス等利用計画の作成依頼が回ってくる流れとなっています。
依頼を受けた相談支援専門員は利用者本人から生活状況や今後の希望を聞いて、サービス等利用計画という書類を作成していきます。
相談支援専門員がサービス等利用計画を自治体に提出し、受理されると、福祉サービスの受給者証が利用者に発行され、いよいよ福祉サービスを利用できるようになります。
サービスの利用には時間が掛かる
利用者やご家族の中には、すぐにサービスを利用したいと感じている人がいると思います。しかし、実際にはこのような手続きを経るので、申請から利用開始までに1か月程度かかることが多くあります。そういった手続き上の注意点について説明することも、相談支援専門員の業務です。
2-1,計画は成人と児童に分かれる
計画には大きく成人用(指定特定相談)以外にも、児童用(障害児相談支援)もあります。
成人には障害がありながらも自宅で生活していくためのヘルパー(居宅介護)利用や、仕事をするための福祉サービスがあります。
利用者それぞれで希望するサービスは異なるため、サービス等利用計画もオーダーメイドとなります。「その人らしい」生活が送れるような計画にすることが大切です。
児童向けのサービスには、子供の発達を促すための療育を提供する「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などがあります。
相談支援専門員は計画を作成するだけではありません。
地域には同じ種類のサービスを提供している福祉サービス事業所が複数存在することもありますが、事業所ごとによって特色があります。
複数の事業所の中から利用者に合った事業所を紹介し、時には一緒に見学に行ったり、体験する日程調整を行ったりと、実際に利用できるようにサポートしていきます。
児童のサービス等利用計画を作るコツ5選 https://fukushilabo.com/zidou-keikaku121-2/
2-2,計画更新とモニタリング
サービス等利用計画は1度作成して終了ではなく、1年~3年ごとに更新することが必要です。受給者証の利用期間がサービスの種類によって、1~3年と定められているからです。
さらに、利用後は1か月~6か月ごとに「モニタリング」期間が設けられています。モニタリングでは、サービスを利用していて問題がないか、福祉事業所と利用者の双方と面談を行います。
モニタリング実施月でなくても、なにか課題が出てきた時にはその都度、相談支援専門員が対応します。
このように、相談支援専門員は利用者にサービスを紹介するだけではなく、その後も長くお付き合いしていくことになります。
相談支援専門員がモニタリングを行う時のポイント5つを紹介
3,基本相談支援
基本相談支援は、障害のある利用者やご家族が困ったときになんでも相談でき、必要な情報を提供することで、全ての相談支援のベースとも言えます。いつでも相談できる場所なのですが、飛び込みで来られる方は実際には少なく、市民の方に相談支援事業所という存在がまだまだ知られていないのだと思います。
「何でも相談」の例としては、福祉サービスや障害年金の申請の仕方や、障害者が利用できる余暇活動の場について情報提供を行っています。
障害年金に関しては年金事務所が窓口となっていますが、利用者やご家族が書類をすべて用意するのは大変な作業です。
そのため基本相談支援として、相談支援専門員がお手伝いする場合もあります。
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4,地域移行、地域定着支援(地域相談支援)
近年、ノーマライゼーションの観点から障害があっても施設で一生を送ることなく、地域で暮らすことが推進されるようになりました。そこで、地域相談支援として、地域移行支援と地域定着支援があります。相談支援専門員の数が少ないと、なかなか提供が難しいことから、全ての相談支援事業所が担っているわけではなく、一部の事業所が提供しているサービスとなります。
4-1,地域移行支援
地域移行支援では、精神科病院から退院して、地域で生活する場合や、グループホームを出て1人暮らしをする場合などに、新たな生活で必要な手続きをサポートします。
長年入院生活を送っている患者さんの場合はいきなり地域生活を送ることが難しいため、まずは1泊から始めるなど、少しずつ地域での生活の練習を重ねていきます。地域移行支援では、入院中の患者さんと病院で面会して希望を聞いたり、病院に所属するソーシャルワーカーと連携するための会議を開いたりしています。コロナ禍では面会ができなくなったため、地域移行支援を行うのが難しくなりました。今後は少しずつ面会ができ、支援しやすくなっていくのではないかと思います。
4-2,地域定着支援
利用者が無事地域移行できた後、安定して地域で生活し続けられるよう、定期的に連絡を取ったり訪問したりするサービスが地域定着支援です。
事業所としては相談員が利用者に、最低月1回の電話連絡を行うことで、支援費の請求が可能となります。利用者が自宅で倒れたなど、相談員が緊急で訪問した場合には「緊急時対応加算」もあります。ただ実際には利用者の状況に応じて月に何度も訪問しなければならないということもあります。
地域定着支援のサービスはどこまでやればいい?事例と共に紹介
4-3,会議の開催
地域定着支援の利用者が生活するうえで欠かせないのが多職種連携です。利用者の状態が不安定になった場合、ケア会議を開くことも相談支援専門員の役割として求められています。
例えば利用者がお金を使いすぎて預金がなくなりそうな場合や、精神的に不調で仕事に行けなくなっている場合などが想定されます。会議の企画から日程調整、議題の設定、関係者への呼びかけなど、会議を1回招集するだけでも相談支援専門員がやらなければならないことは沢山あります。
会議の開催は多忙な中招集するので大変かもしれません。しかし、同じ利用者さんを支援していても、事業所によって見えている本人像や課題意識が違うことがあります。対象利用者に関わっている支援者が共通意識を持ち、今後の支援の方向性を確認するために重要な役割を持っています。
4-4,定期訪問
地域定着支援では、よほど状態が安定している人でない限り、筆者はなるべく月1回は訪問するようにしています。電話連絡だけでは状況が正確につかめなかったり、信頼関係が築きにくかったりするからです。
定期訪問では利用者の都合に合わせて落ち着いて話せる時間帯を調整し、自宅に訪問することが多いです。
相談員が住居の中を目で見て確認することで、生活状況が分かることもあります。例えば清掃が行き届いていなかったり、コンビニ弁当中心の食事になっていたりすることがあります。そういう意味でも、相談支援専門員にとって訪問は重要な仕事です。
5,制度の申請代行
利用者が福祉サービスを利用したり、生活保護を申請する場合にも、相談支援専門員が手続きを代行したり、手伝ったりすることがあります。行政の窓口に行って申請するのは慣れていないとなかなか戸惑うことも多いため、利用者1人では難しいことがあるからです。
そのほか、低所得者向けに行政からお金が補助される場合にも、相談支援専門員が代理で書類を読み、ご本人の同意を得て助成の申請を行うこともあります。特に目が不自由な方や、知的障害があるため書類の内容を理解することが難しい場合にサポートする必要があります。
申請代行と聞くと難しそうなイメージかもしれませんが、慣れていくうちに申請するよう県などが分かってくるので、先輩相談員に教えてもらえば問題ありません。
6,ケアマネとの違い
ほかの業種の方からすると、相談支援専門員とケアマネジャーとの違いは分かりにくいようです。一言でいうと、ケアマネージャーは高齢者を対象にしており、相談支援専門員は障碍者を対象に相談支援を提供します。ただし障害者が65歳になった段階で、介護保険のサービスが優先されることになっています。そのため、高齢かつ障害の利用者は、ケアマネージャーに移管することもあります。
障害者の高齢化が進んでいるため、相談支援専門員とケアマネージャーの連携は今後さらに重要となっていくことが予想されます。
この記事では、相談支援専門員の仕事内容について解説してきました。
難しそうに感じる部分もあったかもしれませんが、利用者の生活を支えていくために重要な業務ばかりですし、やりがいは大きいと思います。
相談支援専門員になるには福祉の仕事を5年以上経験する必要がありますので、ぜひ目指してみてくださいね。
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