高齢者や障害者が賃貸入居した後の支援 国が拡充する制度を解説

相談支援

高齢者や障害者を支援している人の中には、賃貸住宅に入居した後の見守りが不足していることに課題意識を持つ人もいると思います。

この課題に対し、国が見守りの支援制度を拡充する方針で検討に入ったと、2023年6月27日の朝日新聞が報じました。その後テレビのニュースでも続々と取り上げられており、今後の展開に期待が持てそうです。

賃貸住宅への入居をサポートする「居住支援法人」との違いについても、気になる方もいると思います。この記事では、「国が拡充するために検討しているという、見守り支援制度の内容は?」「見守り支援と居住支援法人の違いは?」という疑問に答えていきます。

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目次
  1. 高齢者や障害者が賃貸入居した後の支援 国が拡充する制度を解説
  2. 国が検討している主な支援内容と対象者
  3. 入居後の支援が必要となる背景
  4. メリットとして、空き家対策の効果も
  5. 自立生活援助、地域定着支援との違いは?
  6. 居住支援法人との違いは?
  7. この問題に対する、今後の課題

 高齢者や障碍者が賃貸入居した後の支援 国が拡充する制度を解説

朝日新聞の報道によると、様々な事情から賃貸住宅を借りるのが難しいとされてきた人たちが安心して暮らせるよう、住宅に入居した後も見守りや定期的な訪問サービスによって、支援していく制度ができるそうです。また、国は近く、検討会を設置する方針ということです。

こうしたサポートがあれば、高齢化社会を迎える中、障がいや病気があっても地域生活を継続することができる人が増えるということが期待されます。

国が検討している主な支援内容と対象者

主な支援内容としては、賃貸住宅入居後の見守り活動や、家計管理のサポートが検討されているようです。しかし、単身生活を送っていくには、ほかにも色々な支援が必要でしょうし、その内容は1人ひとり、異なってくると思われます。

筆者の経験上、地域生活者を支援していると、「市役所から書類が届いたけど、よく分からない」「コロナの支援金をもらいたいけど、代わりに申請してほしい」など、色々な相談を受けます。時には「家電が壊れたので、買い物に付き合ってほしい」という相談もあります。

おそらく支援内容の詳細は、今後検討されていくものと思われます。

支援対象者は、高齢者や障害者のほかにも、生活困窮者やひとり親世帯、刑務所からの出所者などの「住宅確保要配慮者」とされる人たちです。

どんな制度でも支援対象を決めなければなりませんが、サポートが必要なのにもかかわらず、制度の狭間が生まれてしまいがちです。支援を受けられない人が出ないようにしてほしいですね。

入居後の支援が必要となる背景

賃貸住宅を借りるには保証人を立て、書類に勤務先や年収を記入し、審査を通過しなければなりません。これは借主が、家賃を支払い続けられるという確証がないと、大家さんとしてはなかなか住宅を貸したくないからです。

しかし、障がいのある方や高齢者などはその保証が難しいことから、1人暮らしをしたくても、住宅を借りられないということが問題となっていました。

特に精神科病院から患者が退院できる状態であっても、借りられる住宅が無いという理由から、退院できないというケースも珍しくありません。さらに最近では、高齢者が入居しても、その後認知症になった時の対応ができないという理由や、室内で孤独死した場合、次に入居が決まりにくいといった理由から、大家さんによる「貸し渋り」が起きています。大家さんの立場に立ってみると、理解できなくもないのですが、「障害者だから」「高齢者だから」という偏見で住居を借りることができないというのは、やはり問題があります。

賃貸に入居した後の支援も必要

仮になんとか家族など周囲の協力を得たり、相談支援事業所が退院支援を行うことで、無事、賃貸住宅に入居できたとしても、その後も1人暮らしを続けられるようにするためには、切れ目のない支援が必要な場合が多いのです。

入居後のトラブルや困りごとの対応が心配なため、「どこか支援機関がついているなら貸しても良い」という大家さんもいます

こうした背景から、賃貸住宅へ入居するための支援と、入居後のサポートを一体となって考える必要があるのです。

メリットとして、空き家対策の効果も

国内では空き家が増え続けており、社会問題となっていますよね。

つまり、家を貸したい大家さんがいる一方で、住居を借りにくい人たちもいるというミスマッチが起きているのです。

今回拡充が検討されている支援制度によって、空き家対策にも一定の効果があると期待されています。

また、多様な背景を持つ方たちが地域で生活しやすくなる体制が整えば、精神科病院からの退院が進むことも期待できると思われます。病状以外の課題によって長期間入院を余儀なくされることを「社会的入院」と呼んでいますが、こうした問題解決へ一助となりそうですね。

国としては退院する人が増えると医療費の削減にもなるので、一石二鳥なのでしょう。

自立生活援助、地域定着支援との違いは?

筆者は障害者を支援する立場ですが、障害福祉サービスの中には、今回検討されている制度と似たようなものが既に存在します。それが、「自立生活援助」や「地域定着支援」という福祉サービスです。

こうしたサービスを利用する場合、相談員が定期的に訪問して健康を維持できているか、経済的に問題はないかなどを確認しています。お金の使い方に課題がある人に対しては、家計簿のつけ方を教えるなどのサポートも行います。1人で通院することが難しくなった場合は、やむを得ず通院同行することもあります。

地域定着支援に関しては、本来、単身生活を送る障がい者が困った時の緊急的な支援という意味合いが強いのですが、色々な支援が必要とされているというのが実情です。

今回の制度は障がい者も対象となっていますが、色々な制度が乱立すると混乱を招く危険性もあります。

自立生活援助や地域定着支援とはどう違うのか、棲み分けする必要がありそうです。

居住支援法人との違いは?

これまで、賃貸住宅を借りることが難しい人に対して、住宅に入居するまでの部分は、「居住支援法人」のサポートが制度化されていました。居住支援法人は都道府県によって認定され、認定された法人に対して補助金が入る仕組みになっています。

居住支援法人は依頼を受けると、不動産会社との仲介に入ってその人に合った住居を一緒に見つけるなどのサポートを行います。

しかし高齢者や障害者は、賃貸住宅に入居後も色々な支援を必要としていますよね。

そこで、今回の制度によって、継続的に支援できる体制を目指すという狙いがあります。

この問題に対する、今後の課題

この制度については、障がい者や高齢者に関しては厚労省、空き家対策に関しては国土交通省、刑務所の出所者に関しては法務省、というように、各省で担当が分かれています。

よくある縦割りになっているので、各省が連携することが求められます。

また、これまで説明した通り、障害福祉サービスにおいては既に同じような制度が存在します。また、各地で社協が実施している、金銭管理支援制度である「日常生活自立支援事業」とも重なる部分が生じそうです。ただ、これまであった課題について協議が行われるということで、一歩前進するのは間違いないです。

自立生活援助や地域定着支援の対象者は障害者に限られており、介護保険制度には類似のサービスはありません。ですから、今回の制度のように介護保険制度や障害福祉サービスの枠を超えて、色々な人が対象になるという点も画期的だと思います。

どのような制度設計がなされていくのか、今後も注目してきたいですね。

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