お子さんに知的障害がある場合、特別支援学校を卒業した後、自立して生活していけるのか心配する親御さんも多いかと思います。
特別支援学校の卒業生の進路データを見ると、近年、以前より、一般企業で働く知的障がい者が増えてきています。この記事では、社会福祉士である筆者が、「知的障がい者が企業で働く場合、どんな仕事に就くのか?」や、「就職が難しい場合はどのような選択肢があるのか」、という疑問に答えていきます。
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1,特別支援学校を卒業した後の主な進路は?一般就労も可能な理由を解説
2,一般就労を目指す生徒が増えてきている
3,2年生の頃から職場実習で経験を積める
4,就職後も福祉のサポートを受けることができる
5,品出しや工場勤務など、職種は多彩
6,就労継続支援事業所から一般就労を目指すことも可能
7,年金と合わせて自立することは十分可能
1,特別支援学校を卒業した後の主な進路は?一般就労も可能な理由を解説
結論から言うと、知的障がいがあっても、企業への就職をあきらめる必要は全くありません。
全国の知的障がい者が特別支援学校を卒業した後の進路データを参照すると、平成15年の就職者が22.4%だったのに比べ、約10年後の平成29年には32.9%まで上昇しました。
進路はそれぞれの障がいの重さや特性などによって決まっていきますが、就職以外の卒業生60%以上の進路が、福祉施設に通所・入所となっています。
ここからは早速、特別支援学校を卒業した後、一般就労が可能な理由をさらに具体的に解説していきます。
2,一般就労を目指す生徒が増えてきている
近年、障がい者など様々な人が一緒に働くダイバーシティ(多様性)という考え方が社会で浸透してきたのを背景に、企業に就職する知的障がい者が増えてきました。
企業に障がい者を雇用するよう、法律で定めている「法定雇用率」も上昇してきていることから、企業側も障がいのある従業員が働きやすいよう、配慮してくれるようになってきています。
さらに企業に就職後も、障がい者就業・生活支援センターの就労支援員などが定期的に訪問するなど、サポートを受けられる制度が整ってきたため、企業も安心して採用することができるようになりつつあり、積極的に雇用し始めています。
就職後、仕事内容が難しかったり、職場の人間関係が悪かったりして、仕事があまり長続きしないと、その後、自立していけるか心配ですが、就職後のサポートがあるのは安心材料になるかと思います。
生徒たち自身も学校の先輩たちが就職する姿を見て、具体的に働くイメージが湧き、「自分も就職して稼ぎたい」と感じる機会が増えてきているようです。
3,2年生の頃から職場実習で経験を積める
特別支援学校の生徒は、在学中の2年生になった頃から学校のカリキュラムの一つとして、企業で働く体験をする「職場実習」に行きます。実習先は学校や地域によって異なりますが、
いくつかの職場を経験することで、生徒たちが3年生の夏~秋には就職先が決まっていきます。
早め早めに行動することで、企業から順次、内定をもらうことができます。障がいがあるかどうかに関わらず、求人の文章だけ読んでも、仕事内容や大変さを理解することは難しい場合があります。実際に体験してみることで、ご本人も自分自身にどんな仕事が合っているか、見極めることができるでしょう。
4,就職後も福祉のサポートを受けることができる
卒業時に、障がい者就業・生活支援センターに利用登録しておくことで、就職後も何か困ったことがあった場合に就業支援員に相談することができます。
支援センターの体制にもよりますが、就業支援員が定期的に職場訪問してくれたり、職場長やご本人と面談したりして、より働きやすい環境づくりをサポートしてくれます。
ご本人との面談では、働くうえでの悩みや困っていることについて、支援員が丁寧に聞いてくれるので、遠慮せずに何でも相談すると良いと思います。
支援センターにはご本人だけではなく、ご家族も相談することができます。
企業と障がい者の懸け橋になる
企業側はどのように配慮すれば障がい者が働きやすいのか、知識が豊富な人と、そうでない人がいます。これは長年障がい者の雇用に積極的だった企業がある一方、最近雇用し始めた企業もあるので、致し方ないことと言えます。
より個別の配慮が必要な場合、具体的にどの部分をどう配慮するべきなのか、それがどうしたら可能になるのか、支援員は企業側へのアドバイスも行い、企業と障がい者の橋渡し役を担います。ちなみに支援センターは税金で運営されているため、利用料は無料です。
支援員は福祉制度に関しても知識があるので、生活費のやりくりやグループホームへの入居など、仕事以外のことでも相談が可能です。
5,品出しや工場勤務など、職種は多彩
就職と一口に言っても、障がいがあってもできる仕事とは、実際にどんな求人があるのか気になると思います。
知的障がい者向けの求人では、スーパーのバックヤードや品出し、飲食店の調理補助、農業生産法人、製造工場などが多いようです。
工場は色々な種類の製造業がありますが、職人の技術を必要とする仕事というよりも、段ボールを組み立てたり、商品を詰めたりするなど、単純作業や繰り返し作業が多くあります。
パソコンを使ったり、人とのコミュニケーションをそれほど必要としない仕事が多いため、知的に障がいがあっても働くことができるのです。
実際に就職してどうしても合わない時は、転職活動をする人もいますので、無理に1か所の職場で働き続ける必要はないと思います。
6,就労継続支援事業所から一般就労を目指すことも可能
学校在学中に一般企業への就職が決まらず、進路が福祉施設への通所となった場合でも、数年間掛けて働くための力を身に着けた後、企業に就職できる可能性もあります。
障がい者が作業を行い、工賃をもらうことのできる通所事業所には、主に「就労移行支援事業所」、「就労継続支援事業所(A型・B型)」の2つに分かれます。
就労移行支援事業所は原則2年間利用し、一般企業への就職を目指します。そのため作業を行うほかにも、面接やコミュニケーションの練習をしたり、履歴書の書き方を学んだりと、実際の就職を見据えて活動していきます。
就労する力をじっくり身に着けることも可能
就労継続支援事業所には利用期限はありませんが、就職を目指すことももちろん可能です。作業内容としては企業から請け負ったチラシ折りやポスティング、パンの製造販売やリサイクル業などを行っているところが多いです。
事業所に通う目的は、簡単な作業ができるようになることだけではありません。毎日遅刻・欠勤せず事業所に通い続け生活リズムを身に着けていくことや、周囲の人と協調性をもって作業をすること、体調管理に気を付けることなど、社会で働くうえで必要なスキルを身に着けることです。
就労継続支援事業所で問題なく働き続けることができれば、事業所の職員との話し合いの上、就職への道が見えてくるでしょう。
7,年金と合わせて自立することは十分可能
就職を考えた時に、気になるのが給料はいくらくらいもらえるのかという点と、親が亡くなった後にご本人が自立して生活していけるのかという点だと思います。
まず給料に関してですが、障がいがあると「最低賃金適用除外制度」と言って、「ほかの人よりもどの程度作業スピードが遅い」など、いくつかの項目を満たした場合、最低賃金をもらえないこともあります。
例えば、最低賃金が1000円の地域で働いているとしても、適用除外制度によって、時給700~800円程度で雇用されることもあり得ます。
もちろん、きちんと作業できると認められる場合は最低賃金をもらうことができますし、正社員として雇用される場合もあります。
障害年金の申請も忘れずに
18歳になると障害基礎年金を申請できるようになります。年金の受給が決まれば、年金と給料を合わせて、自立して生活していくことは可能になるでしょう。
特に障がいが軽度の場合は、グループホームや1人暮らしをして、親から仕送りをしなくても、ご本人だけの収入で生活していくことができる可能性は十分あります。
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